筆者のショーン・エイカー氏はハーバード大学在学中に世界最高峰の大学には幸せそうな学生がいる一方で、「慢性的に不幸な学生が山ほどいる」のはなぜか不思議でならなかったそうだ。
そんな著書の疑問から生まれた本。結論は、現実世界をポジティブな面を見れているかどうかで結果は大きく変わるというもの。私たちの日常生活にも取り入れられそうな項目がたくさん書かれていたので、まとめておく。
「〇〇さえ手に入れば幸せ」ではない。
「昇給したから」、「成績がもうワンランク上がれば」、「あと〇〇キロ痩せれば」幸せなれそうと考えるが、順序が逆。成功が幸せをもたらすのであれば、昇進した社員、入学試験に合格した学生など、何かの目標を達成した人はみんな幸せになっているはず。
しかし、実際には勝利を勝ち取るたびに、さらに次の目標が生まれ、幸せは遠ざかっていく。
本書によるとこれは順序が逆。幸せは成功したからではなく、幸せな状態だから成功するという順番なんだそう。
人は幸せでポジティブな気分のときに成功するというのが本書の主張だ。
うまくいっている人に共通する7つの法則
試練に満ちた環境でも人一倍うまくいっている人がいる一方で、落ち込んで本来の能力が活かせない人がいるのはなぜか?
その答えが本書にある7つの法則だ。
法則1 ハピネス・アドバンテージ
ポジティブな脳は平常時の脳やネガティブな脳に比べて生物学的な優位性を持つ。この法則から、脳を再訓練して積極性を高めることで、生産性や業績を改善する方法が学べる。
法則2 心のレバレッジ化
自分の置かれた状況をどのように経験するか、またはその中で成功できるかどうかは、マインドセット、すなわち心の持ちようによって絶えず変化する。この法則から、幸せと成功をもたらすてこの力が最大になるように心の持ちよう(てこの支点)を調整する方法が学べる。
法則3 テトリス効果
ストレスや悪いことや失敗ばかりに注目するパターンが脳の中に出来上がってしまうと、挫折への道に自らを追い込むことになる。この法則から、脳を再訓練して肯定的なパターン(ポジティビティ)を探せば、どんな状況からもチャンスが見出せるということが学べる。
法則4 再起力
挫折やストレスや困難のさなかでも、人の脳はそれに対処するための道を考え出す。失敗や苦難から立ち直るだけでなく、その経験があったからこそ、より幸せになり成功をつかむ道を見出せるということがこの法則から学べる。
法則5 ゾロ・サークル
大きな試練に圧倒されると、理性が感情に乗っ取られてしまう。まず達成可能な小さなゴールに注目してコントロール感覚を取り戻し、それから徐々に範囲を広げて大きなゴールを達成する方法を、この法則から学ぶことができる。
法則6 20秒ルール
人間の意志の力には限界がある。良い方向に変化してもそれを維持させることは難しい。意志の力が尽きれば、もとの習慣あるいは「最も抵抗の少ない道」にずるずると戻ってしまう。この法則から、エネルギーの調整によって、別の道を「最も抵抗の少ない道」にし、悪しき習慣を良い習慣に置き換える方法を学べる。
法則7 ソーシャルへの投資
試練とストレスに見舞われると、身を丸めて自分の殻の中に閉じこもってしまいがちだ。しかし最も成功している人々ほど、友人、同僚、家族との人間関係を大事にして、それを推進力としている。この法則からは、成功と卓越をもたらす大きな因子、人のネットワークにもっと投資する必要があることを学べる。
思考だけで脳の構造は変化する
1970年代にダライ・ラマが言ったことだ。西洋の科学者たちはこれを馬鹿げたことだと考えたが、ある発見により、この事実が証明されることになる。
タクシー運転手の脳の海馬は非常に大きい
「思考だけで脳の構造は変化する」。これが事実として認識され始めた出来事がある。
ロンドンのタクシー運転手の脳を研究していた研究者たちがタクシー運転手の脳の海馬は非常に大きいという事実を発見したのだ。
海馬は空間記憶をつかさどる部分である。どうしてこんなことが起きるのか。
ロンドンの道路は迷路のようになっていて、頭の中に大きな空間地図を持つ必要がある。それが非常に難しいため、ロンドンでタクシー免許を取るには「ザ・ナレッジ」と呼ばれる道案内テストに合格しないといけない。
この発見が人の生き方が脳を変化させる可能性があるという発見に繋がった。
点字を使う人は使わない人より神経が発達している
目が不自由で普段から点字を使う人の脳をfMRIでスキャンするという実験があった。点字を読まない人は手の人差し指をつついても脳には特に変わったことは起きない。狭い範囲が光るだけで、普通の人のどれかの指をつついた程度。
一方、普段から点字を読む人の人差し指をつつくと、大脳皮質のかなり広い範囲が光った。
脳は変化する
この2つの事実からわかることは脳は変化するということ。本書で紹介されている7つの法則を日常生活に取り入れていくことで、脳の配線をよりポジティブに変化させていくことができる。
最後に
以前、私はこんな記事を書いた。
練習をすればするほどミスが増えるってことない?高校時代に野球をしていたのだが、練習をすればするほどミスが増えていった時期があった。
練習すれば当然うまくなると考えていたため、不思議で仕方なかった。
本書を読んだ今ならなんとなく理由がわかる。「ミスをしたくない」という気持ちで練習を重ねていたため、ミスをするときのパターンが脳の中でできあがってしまったんだろうなと思う。法則3のテトリス効果だ。
もっと早く本書に出会っていればなぁという思いもある。
いずれにせよ、本書に書かれていることはビジネスマンだけでなく、多くの人が日常生活で取り入れられる内容がぎっしり詰まっている。