職場での雑談は意外と苦手意識を持っている人が多いはず。
「軽い雑談ができないから職場で打ち解けられない」
「あの人みたいにコミュ力が高くないから人間関係が希薄・・・」
この本を手に取った私もこのような思いを抱いたことがあります。
そんな悩みに精神科医・産業医でもある井上智介氏の『人と話すのが疲れるがなくなるストレスゼロの雑談』の本の内容が参考になったので、まとめておこうと思います。
雑談は「技術」ではなく「人の心」が土台になっている
書店に行けばたくさんのテクニック本が並んでいますが、それらを読んでもおそらく雑談がストレスだという悩みは解決できないと本書では述べられています。なぜなら「木を見て森を見ず」の状態になってしまっているから。
雑談が上手くなっても劇的な変化はない
多少雑談が上手になったところで、仕事の効率が一気に上がったり、いきなり人間関係が親密になることはないです。けれど、毎日チクチクと心臓を刺激してくるストレスから解放されるだけでも、十分素晴らしい変化になります。本書はそんな雑談によるストレスからの解放を目的とした内容が書かれています。
雑談はしなくても良いし、得意でなくても良い
「軽い雑談ができないから職場で打ち解けられない」「あの人みたいにコミュ力が高くないから人間関係が希薄・・・」という人に共通しているのは「雑談が苦手」と思っていること。
そういった人に対する本書の答えは「雑談は無理にしなくて良い」です。
むしろ「言語化しにくいけど、なんとなく話しにくいなぁ」という気持ちがあるときは無理に雑談をしようと思わない方が良いようです。
「なんか話しにくいなぁ」は伝染する
心理学の観点からも証明されています。
赤ちゃんが笑っている姿を見ると、つい頬が緩んでしまったり、悲しそうな人を見ると自分まで悲しくなるように人の感情は伝染します。心理学では「情動伝染」と呼ばれています。
同じように「話しにくいなぁ」というネガティブな感情を抱いているときに無理して雑談をすると相手にも伝わります。
雑談の間違ったイメージが苦手意識を強める
雑談といえば、以下のことを想像してしまいます。
- 他愛のない会話
- 盛り上がる会話
- 幅広い知識が必要な会話
これらの思い込みはすべてストレスの原因で、会話に対して苦手意識を持ってしまう要因とのこと。
また会話が苦手であること自体欠点ではなく、人によって得意不得意があるなかで、たまたま自分が得意と感じていないだけ。会話が苦手は自分の特徴であって、欠点ではないと井上氏は述べています。
雑談によるストレスからの解放のためのステップ
- 目的
- 自己開示
- 話題
- 聞き方
- 話し方
本書では繰り返し述べられていますが、「雑談は得意にならなくて良い」のです。
この5つのステップは「雑談によるストレスを解消する」ためのステップです。
目的
ストレスが増してしまうNGな目的を具体例にすると以下の通り。
- 営業の仕事で、本題に入る前に盛り上げるため
- ビジネスチャンスにつなげるため
- 気まずい沈黙の時間をなくすため
なかでも「親密度を高めるため」と「間を埋めるため」は井上氏が特におすすめしないNGな目的です。
本心ではないことが多いから。なかには本音で親密度を高めたいという人もいるかとは思いますが、万人に当てはまるわけではありません。取引先の人や上司、ただの顔見知りとどこまで親密度を高めたいですか。本心ではないことを目的においても、雑談が楽しめないですし、ボロが出て結局大きなストレスを感じることになります。
状況に応じて、時間が変わってきます。サイズ感のあった雑談を繰り広げることはとても高度で、次第に大きな負担となってしまうのです。
では、雑談の目的についてはどう考えるのが良いのか。本書では雑談の目的は「おもてなし」とするのが良いと書かれています。相手に「おもてなし」をしようとすることで自分自身に良い影響を与えることができるからなんだそう。
「おもてなし」を意識しても緊張する場合について、井上氏は「雑談にはかならず終了時間がある」「まぁ気まずくても、そのうち終わるからいっか」と心の中で呟くのが良いと述べています。このように考えることで自分を俯瞰した状態になり、自然とリラックスした状態になれるようです。
自己開示
他人と関わる上でストレスを感じる原因は「不信感」です。
いくら雑談の目的を「おもてなし」としたところで、相手からネガティブな感情を持たれていたら、雑談はうまくいきません。また、どれだけ相手から親切にしてもらっても、その相手がどんな人なのか分からなければ不信感や恐怖感を抱いていしまいます。
まずは自分がどんな人間なのかを相手に示す必要があります。そこで自己開示が重要になるのです。
自己開示をすることで「あなたには自分の情報を公開しても大丈夫だと思っています」と信頼していることを間接的に伝えられます。すると相手は「これだけ心を開いて自分のことを教えてくれるのだから、こちらも同じように自分のことを話したい」と考えてくれます。心理学用語で「返報性の原理」と言われるようですね。
この繰り返しで関係性が徐々に親密になっていきます。
自分がある程度自己開示をしたのに、相手からのお返しの自己開示がほとんどないときは相手から歓迎されていないことになります。これを判断基準に相手のパーソナルスペースに土足で踏み入る事態を防ぐことができます。
自己開示をすれば相手に関心感や好感を持ってもらえることはありますが、比例関係ではないと井上氏は述べています。
話題
話題が出てこないという悩みは多いと思いますが、本書では「話題はストックするものではない」と書かれています。話題をストックしておいても以下の理由でうまくいかないことが多いようです。
- 雑談の方向性が決まっていない
- 相手に興味を持てない
先ほど雑談の目的が「おもてなし」だと上手くいきやすいとありましたが、ストックした話題からは相手へのおもてなしにするのが難しいだとか。理由は話の内容のメインが情報になってしまうから。
話題のストックがあっても、相手に興味がないと上手くいきません。重要なのは相手に興味を持つことであって、雑学のような情報をメインにしてしまうと相手からすればテレビのニュースを見ているような感覚で一方的な会話になってしまいます。
ではどうしたら良いのか。本書では「グラデーション」をかけることと「感情」を混ぜ込むことをおすすめしています。例えば以下のように。
・天気の話題→休日の天気の話→この前はどこに出かけましたか?
・テレビの話題→どんな番組をよく見るんですか?
話題を徐々に相手の行動へずらしていくイメージです。
また「感情」を混ぜ込むについては以下のように。
・天気の話題→「週末は雨らしいので、ホッとしていますよ」
このように言われたらなんで?と思いますよね。人が人に興味を持つときは、相手を理解したとき。まったく知らない相手に対して興味を持つことはできません。相手を理解したとできるのは、外面的な情報ではなく、内面的な感情を理解したとき。
なので、自分との雑談に興味を持ってもらうためには自分の内面について自己開示して理解してもらう必要があるのです。
聞き方
ポイントは「内容」ではなく、「気持ち」に耳を傾けること。
本書では聞く力を相手の気持ちを正しく捉える能力としています。難しく捉えることはなく、最低限、今の話がポジティブな話題なのか、ネガティブな話題なのかが把握できていれば良いようです。
話し方
気をつけるべき点は1つだけ。大失敗をしないこと。
失言をしてしまうときは主にしゃべりすぎてしまうときです。
承認欲求が高まっているときや沈黙に恐怖を感じすぎているときは特に注意が必要のようです。
そこで、井上氏は自分の話は10秒以内を心がけるのが良いと述べています。10秒を超えてしまいそうな話題なら、10秒を一つの単位とし、話を区切るのが良いそう。
例えば30秒の話なら、10秒×3を意識し、「序論・本論・結論」のように。40秒なら10秒×4で「起・承・転・結」のように。なぜなら、人の集中力持続時間は平均8秒だからです。
雑談のストレスが減ればきっと世の中はもっと楽しい
学生時代からもう少し上手く人と会話ができたらなぁと思うことがありましたが、大人になってもいまだに思います。
学校でも会社でもそうですが、思い返すと通勤通学の際の感じるストレスのほとんどは人とのコミュニケーションに関して。
きっと楽しい雑談ができるようになれば学校や仕事がもっと楽しくなるんだろうなと思い本書を手に取りました。
雑談とは何か?が精神科医の立場から根拠立てて書かれており、また読み返したい一冊だと思いました。