今日は仕事の話をしてみようと思います。
入院費が支払えない
普段は病院でソーシャルワーカーをしております。
患者さんの退院先を一緒に考えたり、経済的不安に対して、何か使える制度がないか考えたりというのが主な仕事。
先日、「医療費を支払うことができない」という患者さんのご家族とご相談をさせていただきました。
厚生年金や企業年金を合わせると、大体月5万円の収入。貯蓄は10万円未満。住民税が非課税の方だったので、医療費が減額になり、大体月5万円ほど。
全くお金が足りないというわけではないけれども、患者さんにだって生活がある。全て5万円全てを医療費に充てられるわけじゃない。
別で暮らしているお子さんも自分の生活があるから、援助はできない。既に今の入院費の支払いも厳しい状態。色々考え、「生活保護を申請したい」という結論になりました。
生活保護は申請までが、ほんとうに大変
ご本人は入院中のため、お子さんが市役所へ生活保護の申請に行ってくださいました。
結果は、「今日は申請できませんでした」というお言葉。
理由を聞くと「生命保険に加入しているから、それでどうにかならないか。解約の払戻金でなんとかなるなら、まずはそちらで対応いただきたい」という説明だったよう。
市役所の水際作戦というやつです。
一見、最もらしい理由に聞こえます。生活保護には4つの原理と原則があります。
原理の1つには保護の補足性の原理というものも含まれています。
経済的に困窮した人は、いきなり生活保護ではなく、まずは持てる能力や資産、ほかの法律やほかの制度を活用し、最善の努力をしても最低生活が維持できない場合に初めて生活保護制度を活用できるというやつです。
これに当てはめると市役所職員の説明は正しく聞こえます。
申請したい人を拒んではならない
一方で、どんな状況であっても生活保護は、申請の意思を明確に示した時点で「申請された」とされ、拒んではならないという法律もあります。
市役所は予算も限られているし、申請を受け付けてしまったら、原則14日以内に申請者の資産状況を調べ、生活保護受給可否の通知をしないといけない。だから、なるべく申請を受け付けたくない。言葉巧みに、「〇〇だから」とか、「持ち家があるから。車があるから」と申請を受けない。
仕事もできない状態の高齢者、年金も支払ってなかったので受給できない、家もない、生命保険もない。明らかに何も資産がないという方はすんなりと申請が進みますが、少し年金がある、保険に入っていた等、多少なりとも資産がある場合は申請までは本当に時間がかかります。
せっかく時間のないなか、ご家族が市役所へ足を運んでも、1回では申請できず、2〜3回行ってようやくというケースがほとんどです。
うーん。本当に使いづらい。
これも不正受給防止のためという、最もらしい理由づけをされますが、実は不正受給の割合は、すっごく少ない。ほとんどの人が適正に受給されています。
申請したい人は誰でも申請できる。受給できるかどうは、申請後に市役所が調べ、通知する。
本来、これだけのシンプルな制度なはずなのに。
私が申請するなら、
- 「申請に来ました。今日申請したいです」とはっきり伝える
- 録音しておく。(本来やりたくないですが)
- 申請書がもらえない可能性があるので、自分で作成しておく。
申請書は申請の意志が確認できるものであればなんでも良いのです。以下のリンクがおすすめです。
録音はしておかないと、「今日は申請したいと言うことは仰ってなかったですね」と、言った言わないの水かけ論になってしまいます。
今回のご家族も申請したくて行ったのに、市役所に確認したら、ご相談だけで、申請したいというのはなかったということにされていました。
だから、録音は必須。
もしかしたら、私も拒む側にいたかもしれない
生活保護課の職員も、病院で働くソーシャルワーカーも同じ福祉職。
市役所への就職を選択していたら、今頃私も必死で拒む側に回っていたんだろうなと思うと少し複雑です。
きっと私も同じことをしていただろうと思います。
限られた予算を本当に必要な人に回さないといけない。
きっと上司から、その上司も、申請者が多くなってしまうと上の人から詰めれてしまうのかもしれない。
我々、相談員もそうですが、申請する人も知識をつけないといけない時代なのかもしれません。
生活保護はシンプルです。
生活保護法には申請したいという人を拒んではいけないと書かれているのです。