最近になって、一期一会(いちごいちえ)という言葉の美しさに気づいたんだよね。
今までは小学校低学年くらいの女子が持ってる下敷きに書いてある言葉、くらいにしか思っていなかったのね。
けど、実は「すっごく良い言葉だったんだなぁ」って気がついた。
良い言葉というか、美しい考え方だなと。
出会いのほとんどは一期一会
学生の頃もそうだったけど、社会人になると、一期一会を実感する機会が多くなる。
例えば仕事。
僕は病院でソーシャルワーカーとして働いているんだけど、日々色んな職種の人と関わっている。
今の時代、終身雇用なんて保証されている会社少ない。転職を経験する人も多いと思う。
病院は国家資格保有者の集まりだから、特に「キャリアアップ」という考え方が強くて、転職がなんにも珍しくない。
特に医師や看護師はどこも人手不足で引く手あまた。
1回以上は転職を経験している人の方が多いんじゃないないかな。
気がついたら転職していたなんて、ザラ
「あの看護師さん、しばらく見ないな」と思ったら転職していたり、「担当病棟が変更になっていた」ということを、もう10回以上は経験した。
入職してまだ病院の文化に慣れていない頃は、「最後の挨拶できなかったなぁ」と申し訳なく思ったが、何度も続くと、そんな気持ちも薄れてきた。
医師は看護師さんよりも、さらに入れ替わりが激しい。
噂で聞いた程度だが、医師は大学の医局で出世コースに乗るためには、「一度は僻地(≒田舎)での勤務経験があること」が要件なんだとか。
地方の医師不足を解消するためだ。
都市部にある大学から医師が半年ごとに派遣されて、任期を満了したらまた戻っていく。
医師という職業はいったい、生涯にいくつの病院で働くことになるのだろうか。一つの病院の勤務だけで終える医師の方が珍しい。そのおかげで、田舎の医療が成り立っているのだから、本当に感謝しかない。
一緒に仕事をしたことなど、きっと覚えていない
そんな環境に身を置いているからこそ、思うんだ。
「転職してしまえば、今日の仕事のことなど、きっとなーんにも覚えていないよなぁ」って。僕のことだって、1ミリも記憶に残っていないはず。また逆もしかり。
よほど濃い関わりをした方じゃないと、街ですれ違っても気が付けないと思うわ。
昨日関わった医師だって、また別の病院に移動になる。そしたら昨日相談したことは、なかったかのように忘れるんだろうな。
僕もそうなんだけど。
昨日関わった看護師さんだって、きっといつか転職することになると思う。そしたら昨日、相談した困難ケースのことは、頭の片隅にすらないはず。
もしかしたら、当事者である患者さん、ご家族だって、数年過ぎれば忘れているのかもしれないね。
鮮明に残っているのはカルテのなかの記録のみ。
誰かの「一瞬の困難を解決する」ために働いている
こう考えてみると、「僕らの仕事ってなんだろう?」と、思考の底なし沼に陥る。
今している仕事のおそらく9割以上は、数年後誰の頭のなかにも残っていない。
僕たちは「その瞬間の困難を乗り切るため」だけに働いているんだなとつくづく実感する。
喉元過ぎれば、熱さを忘れるということわざがあるが、僕らの仕事は喉元を過ぎるのをサポートすることなんだろうと思う。
建設会社のように、「父ちゃん、あのビルの建築に関わったんだよ」という目に見えるものは、なーんにもない。目に見えるのはカルテの記録と、大きなトラブルなく今日を迎えられているということだけ。
きっと、同じような経験をしている人。多いんじゃないかな?
一期一会の美しさを実感できる年齢になった
何度かそんな経験をするなかで、一期一会という言葉に戻ってきたわけだ。
一期一会の意味は、なんとなく、「1つ1つの出会いは、1回きりのものだから大切にしようね」ということなんだろうなということはわかってた。
そんなに難しい言葉でもないから、今まで調べたこともなかったんだけど、改めて調べてみたら、新たな発見がたくさん。
大まかな理解はできていたんだけど、茶道から生まれた言葉だとは知らなかった。
千利休の言葉とされていて「茶会に臨む際には、その機会は二度と繰り返されることのない、一生に一度の出会いであるということを心得て、亭主・客ともに互いに誠意を尽くす」という心構えを意味しているんだとか。
あなたとこうして出会っているこの時間は、二度と巡っては来ない、たった一度きりのもの。だから、この一瞬を大切に思い、今出来る 最高のおもてなしをしましょうということ。
日本にしかなかった概念なんだって。
他人の記憶に残り続けるのは難しい
うる覚えなんだけど、人間が関係を維持しつづけられるのは多くても150人程度。
そのなかでも、親密で良好な関係を維持しようと思うなら、6人程度が限界らしい。家族が2人、友達が2人、趣味や職場が2人って感じかな。
たしか、このあたりの本に書いてあったような。
悲しいけど、それ以外の人はほとんど覚えていない。
どんなに時代が進んでも、脳みそは大昔のまま。明日一緒に仕事をする人だって、仕事した内容も、仕事したこと自体もいつか忘れる。
だからといって、適当に仕事したりもしない。一瞬の困難を解決するために、悩み、考えながら関わる。
そしてその人が転職したら、きっともう二度と一緒に仕事をする機会はない。
まさに、一期一会なんじゃないかな。
日本にある美しい思想を大切にしたい
金輪際、会うことがなくても誠心誠意、応対する。
美しい日本語だなぁ。
こう考えると、僕たちは瞬間、瞬間のために生きているんだなと思う。
よく、未来のことを不安に思って、手に汗握ってしまうことが多いけど、喉元を過ぎればだーれも覚えてない。
だから、今の自分にできる誠心誠意で対応したなら、あとはよく休んで明日に備えよう。
まとまらないけど、日本にはこんなに美しい思想があるんだから、もっと自信を持とうって思った話でした。